JC-STAR★1とは、IoT製品共通の最低限のセキュリティ要件について、ベンダー自身が自己評価を行い、申請することで適合ラベルの付与を受ける自己適合宣言方式の制度です。
制度の概要はすでに理解しているものの、実際にどう申請を進めればよいか分からないという中小IoTメーカーの担当者は少なくありません。
【結論】 JC-STAR★1の取得は、対象確認→自己評価・書類準備→申請番号取得・提出→受領→確認・受理→手数料支払い→ラベル交付、という流れで進みます。
申請時に一律提出する書類と、原則として保管し、確認過程やサーベイランスで求められた場合に提出する証跡資料は別物であり、混同すると準備の手戻りにつながります。
申請手数料は198,000円(税込)、ラベルの新規有効期間は発行日から最大2年間です
本記事では、JC-STARの制度概要を把握している中小IoTメーカーの担当者に向けて、★1を実際に取得するまでの流れと申請に必要な書類を、申請実務の観点から整理します。
JC-STAR(セキュリティ要件適合評価及びラベリング制度)とは、経済産業省の制度構築方針に基づき、IPAが運営するIoT製品向けのセキュリティラベリング制度です。
★1から★4までのレベルがあり、★1・★2はベンダー自身の自己評価に基づく自己適合宣言方式、★3・★4は第三者機関による評価・認証方式に整理されています。
(出典:経済産業省「IoT製品に対するセキュリティラベリング制度(JC-STAR)の運用を開始しました」)
★1は、デフォルトパスワードを使用する場合に機器ごとに異なる推測困難な値とすること、または初回起動時の変更を必須とすること、認証情報を変更できることなど、IoT製品共通の最低限のセキュリティ要件を満たしているかを確認する内容です。
JC-STAR評価機関による第三者評価は必須ではありませんが、一部の評価項目ではポートスキャンや脆弱性スキャンなど、ツールを用いた実機テストが評価手順に含まれます。
必要に応じて、評価をJC-STAR評価機関や検証事業者に依頼することもできます。
(出典:IPA「★1レベル適合基準・評価手法(JST-CR-01-01-2024R1、1.1版)」)
制度の詳細や適合基準は改定される可能性があるため、着手前に経済産業省・IPAの公式サイトで最新情報を確認してください。
JC-STARの制度全体の概要については、以下の記事でも解説しています。
対象範囲を「インターネットに接続するIoT機器」と狭く捉えると、該当製品を見落とすおそれがあります。
公式には、IP(インターネットプロトコル)を使用したデータ送受信機能を持ち、一定の条件を満たす幅広いIoT製品が対象です。
(出典:IPA「セキュリティラベリング制度(JC-STAR)についての詳細情報」)
インターネットに直接接続できない製品でも、別の機器を介してインターネットに接続できる場合は対象に含まれます。
一方、PCやスマートフォン、タブレットといった汎用の情報端末は原則として対象外です。
ただし、セキュリティ機能の追加が厳格に制御され、汎用端末として利用できないなど、一定の条件を満たす場合は対象になり得ます。
(出典:IPA「★1(レベル1)評価ガイド(JST-EG-01-01-2024R1、1.1版)」)
自社製品が対象になるかどうかの判断に迷う場合は、経済産業省・IPAが公開している資料で対象範囲の考え方を確認することをおすすめします。
JC-STAR★1の取得は、大きく5つのステップで進みます。
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ステップ |
内容 |
詳細 |
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1 |
対象製品と適合基準を確認する |
機器の有無、IP通信機能、インターネットへの接続可能性、購入後のセキュリティ機能追加の可否など、★1の対象条件への該当を確認し、IPA公開のチェックリストで要件項目を洗い出す |
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2 |
自己評価を行い、申請書類を準備する |
チェックリスト各項目を自己評価し申請書類を整える(チェックリストは申請日前90日以内に作成したものに限る)。証跡資料は申請時に一律の提出は不要だが、確認過程で追加提出を求められる場合があり、有効期間中は保管が必要 |
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3 |
申請番号を取得し、書類一式を提出する(受領) |
IPAのオンライン申込フォームで申請番号を取得し、暗号化していない書類一式をメールで送付する。受領時点ではまだ正式な受理ではない |
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4 |
経済産業省とともに確認され、受理・手数料の支払い案内を受ける |
IPAが経済産業省とともに書類を確認(不備時は2週間以内に再提出)。受理されると手数料の支払い案内が届く(受領からおおむね2週間が目安) |
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5 |
手数料を支払い、ラベルの交付・製品情報の掲載を受ける |
受理通知を受領したら60日以内に手数料を支払う(振込予定日の2営業日前までに振込通知書(様式2-5)を提出)。支払い確認からおおむね2週間でラベルが交付され、製品情報ページに掲載される(有効期間は発行日から最大2年間) |
以下、それぞれのステップで具体的に何を行うかを解説します。
ステップ1: 対象製品と適合基準を確認する
自社製品が、IP通信機能やインターネットへの接続可能性など、JC-STAR★1の対象条件を満たすか確認します。
次に、IPAが公開している★1向けのチェックリストを入手し、求められる要件項目を洗い出します。
ステップ2: 自己評価を行い、申請書類を準備する
チェックリストの各項目について、製品がどのように要件を満たしているかを自己評価し、申請書類を整えます。
パスワードの初期設定や認証情報の変更可否といった項目は実機での確認作業が必要になるケースが多く、開発部門との連携が欠かせません。
なお、★1向けチェックリストは申請日前90日以内に作成したものに限られます。
申請準備が長期化した場合は、チェックリストの作成日と評価内容を確認し、必要に応じて評価や実機テストの内容を更新してください。
評価の根拠となる証跡資料は、申請時に一律に提出する必要はありません。
(出典:IPA「★1・★2適合ラベル申請方法の概要(2025.08.03版)」)
ただし、申請内容の確認過程でIPAまたは経済産業省から追加情報や資料の提出を求められる場合があります。
また、有効期間中は証跡を保管する義務があり、サーベイランス等の際に提出を求められることがあります。
ステップ3: 申請番号を取得し、書類一式を提出する
2026年4月22日以降、申請番号はIPAのオンライン申込フォームから取得する運用になっています。
取得した申請番号をメール本文に記載し、暗号化していない申請書類一式を添付して送付します。
書類一式が受領されると「受領番号」が記載された受領通知が届きますが、この段階ではまだ正式な受理ではありません。
(出典:IPA「★1と★2の新規申請手続き」)
記載内容に不備があると差し戻しが発生するため、提出前に社内でのダブルチェック体制を整えておくと手戻りを減らせます。
ステップ4: 経済産業省とともに確認・受理され、手数料の支払い案内を受ける
その後、IPAが経済産業省とともに書類の記載内容を確認します。
不備があれば差し戻しが行われ、差し戻し通知から2週間以内に修正・再提出が必要です。
確認手続の結果、申請が受理されると「受理番号」が記載された申請手数料の通知書が届きます(受領通知からおおむね2週間程度が目安です)。
(出典:IPA「★1・★2適合ラベル申請方法の概要(2025.08.03版)」)
ステップ5: 手数料を支払い、ラベルの交付・製品情報の掲載を受ける
「申請受付受理書兼申請手数料通知書」を受領したら、60日以内に申請手数料を支払います。
手数料を振り込む際は、所定の「振込通知書(様式2-5)」を振込予定日の2営業日前までにIPAへ提出します。
手数料の支払いが確認されると、適合ラベルが交付されます(支払い確認からおおむね2週間程度が目安です)。
ラベルの交付と同時に、申請書類のうち「公開」と指定した情報がIPAの製品情報ページに掲載されます。
★1適合ラベルの新規有効期間は、発行日から最大2年間とされているため、更新のタイミングもあわせて管理しておく必要があります。
申請時に提出する主な書類は以下のとおりです。
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書類 |
必須・条件付き |
注意点 |
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適合ラベル取得申請確認書 |
必須 |
申請責任者名義で作成し、申請責任者の組織名義の電子証明書を用いた電子署名、記名押印、自署のいずれかが必要 |
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JC-STAR適合ラベル申請書 |
必須 |
最新様式を使用し、日本語で記入 |
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★1向けチェックリスト |
必須 |
申請日前90日以内に作成したものに限る |
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委任状 |
条件付き |
代行事業者が申請する場合 |
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法人格を証明できる書類 |
条件付き |
法人番号またはLEI番号を記載しない場合。登記事項証明書等は原則として発行日から6か月以内かつ最新のもの |
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製品カテゴリー別の追加申請書 |
条件付き |
エネルギー関連機器(エネファーム・PCS・ガス給湯器等)が対象 |
一方、要件への適合を裏付ける設計書やテスト結果などの証跡資料は、申請時に一律提出する必要はありません。
ただし、申請内容の確認過程でIPAまたは経済産業省から追加提出を求められる場合があります。
また、有効期間中は保管する義務があり、サーベイランス等の際に提出を求められる可能性があるため、社内できちんと管理しておく必要があります。
これらの様式や提出方法は改定される可能性があるため、申請直前にIPAの公式サイトで最新版を確認することをおすすめします。
なお、上記は新規申請時に提出する書類です。
申請が受理され手数料を振り込む際には、別途「振込通知書(様式2-5)」を振込予定日の2営業日前までにIPAへ提出する必要があります。
社内での準備期間は、製品の複雑さ、仕様書や証跡資料の整備状況、実機テストの実施体制によって大きく異なるため、一律の目安を示すことはできません。
申請後については、書類に不備がなければ受領から受理までおおむね2週間程度、手数料の支払い確認からラベル交付までおおむね2週間程度が目安として示されています。
(出典:IPA「★1・★2適合ラベル申請方法の概要(2025.08.03版)」)
なお、IPAは2026年7月31日付で、申請件数の急増により確認作業に通常より時間を要していると案内しています。
上記の期間はあくまで通常時の目安であり、現時点ではより余裕を持ったスケジュールを組む必要があります。
(出典:IPA「★1と★2の新規申請手続き」)
費用面では、★1の申請手数料は198,000円(税込)です(金額は変更される可能性があるため、申請時に必ず公式サイトで確認してください)。
加えて、外部の検証事業者に実機テストを依頼する場合は、別途費用が発生します。
自社対応が向いているのは、セキュリティ担当者が社内におり、製品仕様書や設計資料が整理されているケースです。
一方で、「どの項目が自社製品に該当するか判断に迷う」「実機テストや証跡整理に割けるリソースがない」「複数製品を並行して申請したい」といった場合は、JC-STAR対応の実務を熟知した外部の支援サービスを利用する方法もあります。
特に初めて申請する製品については、専門家のチェックを一度挟んでおくと、差し戻しによる工数増を避けやすくなります。
適合ラベルの新規有効期間は、発行日から最大2年間です(申請すれば2年以内の有効期間も設定可能)。
延長を希望する場合はIPAへの延長申請が必要で、申請が認められれば有効期間は原則として2年間延長されます(申請により2年以内の有効期間を設定することも可能)。
(出典:IPA「★1レベル適合基準・評価手法(JST-CR-01-01-2024R1、1.1版)」)
ただし、2026年8月時点では、延長申請の受付時期・提出書類・具体的な申請方法などの手続きの詳細はIPA公式サイトで「2026年に公表予定」とされています。
(出典:IPA「★1と★2の延長申請手続き」)
延長を検討する場合は、有効期限が近づく前にIPAの最新の案内を確認してください。
適合基準に大きな改訂があり、旧版と並存させる猶予期間が終了しても、有効期間中のラベルが途中で失効することはありません。
旧基準の適用期限や猶予期間、延長申請の可否については、改訂時にIPAから公表される案内に従う必要があります。
(出典:IPA「★1レベル適合基準・評価手法(JST-CR-01-01-2024R1、1.1版)」)
★1向けチェックリストの判定結果に影響しない変更であれば、バージョンアップ後もラベルはそのまま有効で、更新申請や再申請は不要です。
一方、チェックリストの判定結果に影響する変更を行った場合はサーベイランスフェーズに入り、その結果が「許容」であればラベルは継続しますが、「不許容」であればラベルは失効します(自主取下げ扱い)。
(出典:IPA「★1申請補足ガイダンス(2025.03.24版)」)
製品の仕様変更を行う際は、判定結果への影響の有無を事前に確認し、影響がある場合は速やかにIPAへ報告してください。
原則として、製品に付いている製品ロゴ・ブランドロゴ・社名ロゴを保有し、その製品の最終製造責任を負う「製造事業者」が申請企業になります。
販売店・販売代理店・輸入代理店といった「販売事業者」は、製造事業者から卸を受けて製品を販売する立場のため、申請企業にはなれませんが、委任を受けて申請代行企業になることはできます。
(出典:IPA「★1申請補足ガイダンス(2025.03.24版)」)
また、OEM/ODM製造委託先やファブ工場の企業は、実際に製品を製造する「実際の製造ベンダー」として申請書に記載します。
なお、製造方法(自社工場製造かOEM/ODM製造か)や製造委託先が申請後に変わった場合は、変更が生じた申請段階に応じて、申請書記載事項の訂正、申請の取下げ・再申請、またはラベル交付後の変更・報告手続きが必要になります。
申請書類を提出しただけの段階では、「JC-STAR適合予定」「取得申請中」「適合ラベル対応」など、ラベルを取得済みまたは取得見込みであると誤認させる表示は認められていません。
IPAから受理番号または仮登録番号が発行されていない段階では、申請中である旨の表示は控える必要があります。番号発行後に表示する場合も、番号の記載方法を含め、IPAの最新案内に従ってください。
不正な表示が判明した場合には、必要に応じて事実の公表を含め、適合ラベル申請手続き上、何らかの対処が行われる可能性があるため注意してください。
(出典:IPA「★1と★2の新規申請手続き」)
JC-STAR★1の取得は、対象確認→自己評価・書類準備→申請番号取得・提出→受領→確認・受理→手数料支払い→ラベル交付という流れで進みます。
証跡資料は申請時に一律提出するものではなく、原則として有効期間中の保管対象である点、対象範囲がインターネット直接接続に限らない点、書類の「受領」と正式な「受理」は別物である点など、実務でつまずきやすいポイントを事前に押さえておくことが、スムーズな取得への近道です。
自社だけでの対応が難しい部分は、専門の支援サービスへの相談がおすすめです。
サイエンスパーク株式会社では、「JC-STAR取得支援サービス」を通じて、JC-STAR★1の実機診断と★1向けチェックリストの作成をセットで支援しています。
JC-STAR★1の自己評価では、要件の解釈や実機テスト、証跡の整理などが必要となるため、自社だけでの対応が難しい場合があります。
当社では、実務担当者に伴走する形で取得準備を支援しています。
「何から手をつければいいか分からない」という段階からのご相談も可能です。
また、当社の「IoT脆弱性診断」は、経済産業省が定めている「情報セキュリティサービス基準」への適合性を、当情報セキュリティサービス基準審査登録委員会が審査し、適合と認定されたサービスとして、情報セキュリティサービス台帳へ登録されています。
IoT脆弱性診断 登録番号:023-0027-50
サイエンスパーク株式会社は1994年の創業より、ソフトウェア・ハードウェアのセキュリティ対策を30年以上に渡り続けてまいりました。
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参考情報・出典