タイムスタンプの最新動向と未来展望
2025-2026年の転換期、eシールとデジタルトラストが変える日本のビジネス

デジタル・トランスフォーメーション(DX)が加速する現代において、データの「信頼性」をいかに担保するかは、
多くの企業にとって優先すべき経営課題になりました。
2024年1月1日、電子帳簿保存法による「電子取引のデータ保存」が完全に義務化。
もはやデジタルデータでの証跡管理は避けて通ることができなくなっています。
しかし、今求められているのは単なる法令遵守(コンプライアンス)に留まりません。
2026年から本格運用が始まる「eシール」の登場や、生成AI時代の真実性を証明する技術、
そして数年後に迫るとされる量子コンピュータの脅威への対策など、
タイムスタンプを軸とした「デジタルトラスト(デジタルの信頼性)」の基盤は、今まさに大きな転換点を迎えています。
本記事では、2025年から2026年にかけて大きな転換を迎えるタイムスタンプの最新動向と、これからのビジネスに不可欠な未来の姿を解説します。
この記事でわかること
- eシールの動向: 2026年に本格運用が始まる認定制度と、タイムスタンプを組み合わせた新たな証明の仕組み
- 次世代テクノロジーへの対応: 生成AIのフェイク対策(C2PA)や、2030年を見据えた耐量子計算機暗号(PQC)の重要性
- 法制面のアップデート: トラスト基盤整備のロードマップ
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目次
1.デジタルトラストの新たな柱「eシール」とは
eシールとは
eシールは、個人の「実印」に相当する電子署名とは異なり、組織(法人や団体)の「角印」をデジタル化したものです。
電子署名が「誰の意思表示か」を証明するのに対し、
eシールは「どの組織が発行したデータか(発行元の正当性)」と「内容が改ざんされていないか」を証明することに特化しています。
2026年「eシール認定制度」本格運用
総務省は2025年に「eシール認定制度」を創設。
2026年3月に関係規程を整備し、本格的な運用が開始される予定です。
これにより、信頼性の高いeシール発行事業者が明確になり、企業間取引における「デジタル文書の出所証明」が公的に裏付けられるようになります。
<参考資料>
eシールに係る総務大臣認定制度 (総務省・pdfファイル)
電子署名とeシールの違い・タイムスタンプとの統合メリット
電子署名とeシールの違いを、ビジネス実務の視点で比較表にまとめました。
| 電子署名 | eシール | |
| 役割のイメージ | 個人の「実印」・「サイン」 | 組織の「角印」・「丸印」 |
| 主な目的 | 「私がこの内容に合意しました」 | 「我が社がこの書類を発行しました」 |
| 適した書類 | 重要な契約書、合意書、委任状 | 請求書、領収書、納品書、証明書 |
| 発行のプロセス | 本人による署名操作が必要 | システムによる自動付与が可能 |
| 導入のメリット | 契約の「真正性」を担保 | 大量発行書類の信頼性を一括確保 |
これらをタイムスタンプと組み合わせることで、データの証明力を強化することが可能です。
2026年以後の実務では、
・「契約書には電子署名+タイムスタンプ」
・「日常的な取引伝票にはeシール+タイムスタンプ」
というハイブリッド運用が、法的リスクを最小化しつつDXの恩恵を最大化することになると考えられます。
2.2026年に向けた制度面の加速
電子取引データの電子保存・完全義務化(2024年1月~)の現状
2024年1月1日をもって、電子的にやり取りした領収書や請求書を「紙」で保存することは原則禁止されました。
2026年現在、多くの企業では電帳法(電子帳簿保存法)に対応したシステムでの保存や事務処理規程での対応が実務のスタンダードとなっています。
電帳法やタイムスタンプの法的効力については、こちらの記事で解説しました。よろしければご覧ください。
2026年夏に向けた政府のトラストサービス・フレームワーク整備
2025年6月、デジタル行財政改革会議において「データ利活用制度の在り方に関する基本方針」が決定されました。
この中で「2026年夏までに、データ連携において必要となるフレームワークとして、トラストサービスの基盤を整備する」としています。
「トラストサービス」とは電子データ(契約書、請求書など)の信頼性を保証する技術・サービスの総称で、
電子署名、タイムスタンプ、eシールなどが代表的です。
また、EUのトラストサービス規則「eIDAS(イーアイダス)」を参考にした、「トラストサービス推進法」(仮称)の制定の声も高まっています。
今後、国が認めた「トラストサービス」を利用しているかどうかが、取引先選定や公共調達の重要な評価基準になることが予測されます。
<参考資料>
データ利活用制度の在り方に関する基本方針(デジタル行財政改革会議) 3(2)にトラストサービスの記載
弊社は2025年8月、総務省の「タイムスタンプ認定制度(時刻認証業務)」に基づく認定を、
自社構築のタイムスタンプサービス iScign(アイサイン)にて取得しました。
3.テクノロジーの進化と次世代の活用領域
C2PAによるコンテンツ由来証明
C2PA(Coalition for Content Provenance and Authenticity)とは、
デジタルコンテンツの出所や来歴を保証するための技術規格を策定するために設立された団体のことを指します。
GoogleやAmazon、Adobe、SONYなどが運営メンバーとなっており、日本企業ではNHKやCanon、FUJIFILMなどが一般メンバーとして参加しています。
生成AIの爆発的な普及により、ディープフェイクや誤情報の拡散が深刻な社会課題となっています。
「デジタルコンテンツがどこで、いつ、誰によって作成されたか、さらにどのように編集されたか」を
画像ファイルや動画ファイルにメタデータとして埋め込むことで、コンテンツの信頼性を保証できるようにする。
それがC2PAの取り組みであり、今後、技術規格として普及することが予想されます。
タイムスタンプや電子署名といった暗号技術はC2PAの技術の中でも活用されており、メタデータの改ざんを防止しています。
「Qデイ」への備え・耐量子計算機暗号(PQC)への移行

量子コンピュータが従来の暗号を解読してしまう「Qデイ」への対策も、2026年以降加速することが予想されています。
量子コンピューターの性能が今後向上した場合、タイムスタンプの非改ざん性への信頼が、揺らぐことになります。
<参考資料>
量子コンピュータの進化と金融ビジネスへの影響 | リサーチ | インサイト | 電通総研
政府は2025年6月に「第1回「政府機関等における耐量子計算機暗号(PQC)利用に関する関係府省庁連絡会議」を開催しました。
政府機関等における耐量子計算機暗号(PQC)への移行について(中間とりまとめ) (内閣官房・pdfファイル)
中間報告書では、アメリカやEUなどが2035年を期限に耐量子計算機暗号(PQC)への移行を進めていることを踏まえ、
「我が国のサイバーセキュリティの確保等のため、政府機関等における耐量子計算機暗号(PQC)への移行について、
原則として、2035 年までに行うことを目指し、政府機関等における暗号技術の利用状況等も踏まえ、
関係府省庁の連携の下、2026年度に工程表(ロードマップ)を策定し、我が国における円滑な移行を推進していく。」
としています。
4.国内における実装事例(振り返り)
弊社が2025年4月に新拠点を構えた北九州市でも、タイムスタンプ技術を取り入れた電子契約サービスの活用を進めています。
電子契約を全面導入しました!(北九州市webサイト)
タイムスタンプは現在、単なる「書類保存」の手段ではなく、各業界の固有の課題を解決する「信頼のインフラ」として機能しています。
国内での活用事例については、こちらの記事でご紹介しています。よろしければご覧ください。
まとめ
単なる法令遵守ではない、デジタル戦略としてのタイムスタンプ
2024年の電帳法完全義務化を経て、2026年の今、タイムスタンプは企業のデジタル資産を守り、
顧客との信頼を強固にする「戦略的な信頼基盤」となることでしょう。
eシールの本格普及や、生成AI・耐量子暗号への対応など、変化の激しい時代だからこそ、
客観的に「いつ、それが存在していたか」を証明するタイムスタンプの価値は、かつてないほど高まっています。
総務大臣認定の重要性
今後、トラストサービス推進のための法整備が進むことを考慮すると、
サービス選定の条件となるのが「総務大臣認定を受けたタイムスタンプ局(TSA)」であるかどうかです。
揺るぎない証拠力を確保するためには、国の基準をクリアした信頼できるサービスを選ぶ必要があります。
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