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失敗しないタイムスタンプの選び方~RFC3161準拠と長期運用の観点から~

タイムスタンプの選び方で大切なことは、価格や知名度だけで決めることではなく、RFC3161準拠かどうかと、長期運用に耐えられるかどうかを基準に見極めることです。
「とりあえず安いサービスを選んだら、数年後の監査で検証できなくなった」という失敗は、選定段階の確認不足が原因であることが少なくありません。

【結論】 RFC3161準拠は「技術仕様への準拠」であり、日本の総務大臣認定とは別の基準です。

  • 選定時はRFC3161準拠を確認し、利用目的に応じて総務大臣認定の有無・長期署名・アーカイブタイムスタンプへの対応状況も確認する

  • 長期運用では、暗号アルゴリズムの危殆化に備えた再タイムスタンプ・検証情報保存の仕組みがあるかが選定の分かれ目になる

  • 導入前に対象文書の保存義務期間とタイムスタンプの検証可能期間を突き合わせておくことで、後年の切替コストを避けやすくなる

本記事では、RFC3161準拠の技術的な意味から、失敗しないための選定基準の比較、導入手順、費用の考え方まで解説します。

 

 

目次

  1. タイムスタンプの選び方で失敗するとどうなるか?
  2. RFC3161準拠とは何か?
    1. RFC3161とタイムスタンプ局(TSA)の関係とは?
    2. 総務大臣認定とRFC3161準拠は何が違うのか?
  3. 長期運用の観点で確認すべきポイントは?
    1. ハッシュアルゴリズムの危殆化にどう備えるか?
    2. 長期署名・アーカイブタイムスタンプへの対応をどう見極めるか?
  4. 失敗しないタイムスタンプの選定基準を比較する
  5. 導入までの具体的な手順は?
  6. タイムスタンプ導入の費用相場はどのくらいか?
  7. よくある質問
    1. RFC3161準拠であれば電子帳簿保存法にもそのまま対応できるのか?
    2. 総務大臣認定とRFC3161準拠は同じ基準なのか?
    3. 自社サーバーでRFC3161準拠のタイムスタンプ基盤を構築できるのか?
    4. タイムスタンプの検証可能期間は何年か?
    5. 総務大臣認定を受けた時刻認証事業者はどこで確認できるか?
  8. まとめ
  9. タイムスタンプ選びで迷ったら

 

1. タイムスタンプの選び方で失敗するとどうなるか?

選び方を誤ると、主に次のような失敗につながります。

失敗パターン

具体的に起きること

価格だけで選定する

長期署名やAPI連携等に対応しておらず、後年サービスの切替が必要になる

認定の有無を確認しない

タイムスタンプ方式で電子帳簿保存法への対応を図る場合に、法令要件を満たせないおそれがある

検証可能期間を確認しない

文書の保存義務期間より先にタイムスタンプが検証できなくなるおそれがある

導入後の運用体制を決めない

有効期限管理が属人化し、更新・延長の漏れが生じる

これらの失敗は、導入直後には表面化せず、数年後の税務調査や監査で文書の真正性が問われた際に問題として顕在化することが多いため、選定段階での確認が重要です。

タイムスタンプ導入の基本的なメリットや注意点は、以下の記事でも整理しています。

 

 

2. RFC3161準拠とは何か?

RFC3161とは、IETF(Internet Engineering Task Force)が策定したタイムスタンプ(Time-Stamp Protocol)の技術仕様であり、タイムスタンプトークンの構成やタイムスタンプ局(TSA)とのやり取り方法を定めた、国際的に広く利用されている技術仕様です。
(出典:IETF「RFC 3161 - Internet X.509 Public Key Infrastructure Time-Stamp Protocol (TSP)」

具体的には、対象データのハッシュ値・ハッシュアルゴリズムの識別子・シリアル番号・生成時刻・TSAの電子署名などをタイムスタンプトークンとして構成する形式が規定されています。

利用者側は対象データそのものではなくハッシュ値のみをTSAに送信し、TSAがその値に時刻情報を付与して署名を返す、という流れが標準化されている点が特徴です。

選定基準としてRFC3161準拠が重要になる理由は、RFC3161形式に対応した検証ツールや文書管理システムを利用しやすく、特定サービスへの依存を抑えやすいためです。
将来的なベンダー切替や複数サービス併用時にも、検証作業を統一しやすくなります。

 

 

2.1. RFC3161とタイムスタンプ局(TSA)の関係とは?

タイムスタンプ局(TSA)とは、RFC3161で定義された手順に従ってタイムスタンプトークンを発行する主体です。

TSAは利用者から送られたハッシュ値に信頼できる時刻情報を付与し、自らの電子署名を付けて返送する役割を担います。
対象データの内容そのものはTSAに送信されないため、機密文書であっても内容を開示せずに時刻証明を受けられる点が特徴です。

電子署名は、作成者を示すことや署名後の改ざんを検知するために用いられる仕組みであり、タイムスタンプとは役割が異なります。

タイムスタンプと電子署名の違い・使い分けについては、以下の記事で詳しく解説しています。

 

2.2. 総務大臣認定とRFC3161準拠は何が違うのか?

RFC3161準拠と総務大臣認定は、評価する対象がまったく異なる別の軸です。

論点

RFC3161準拠

総務大臣認定(時刻認証業務の認定に関する規程)

定める主体

IETF(国際的な技術標準化団体)

総務省(日本の行政機関)

何を定める・評価するか

データ形式・通信プロトコル等の技術仕様

運用体制・設備等の認定基準への適合

対応状況

国際的に利用されている技術仕様

認定基準を満たし、総務大臣の認定を受けた時刻認証事業者が対象

(出典:総務省「タイムスタンプについて」

日本では、「時刻認証業務の認定に関する規程」に基づき、一定の要件を満たす時刻認証業務を総務大臣が認定する制度が設けられています。

一般財団法人日本データ通信協会は指定調査機関として認定に関する調査を行うほか、認定タイムスタンプを利用する事業者・サービスの登録制度を運営しています(協会独自であった「タイムビジネス信頼・安心認定制度」は2024年3月に廃止されています)。
(出典:日本データ通信協会「認定タイムスタンプを利用する事業者に関する登録制度」

海外の商用TSAを含め、RFC3161に準拠していても日本の総務大臣認定を受けていないサービスは存在するため、「RFC3161準拠」の表記だけでは国内の認定要件を満たすかどうかは判断できません。

電子帳簿保存法のスキャナ保存など、国内の法令要件への対応を目的とする場合は、まず対象となる保存区分と法令要件を確認し、タイムスタンプを利用する場合には総務大臣認定の有無まで確認することが実務上重要です。

 

3. 長期運用の観点で確認すべきポイントは?

長期運用の可否は、主に次の3点を確認すると見極めやすくなります。

  • 検証可能期間がどのくらい確保されているか

  • ハッシュアルゴリズムが将来陳腐化した場合の対応方針が示されているか

  • 長期署名・アーカイブタイムスタンプへの対応や、証明書チェーン等の検証情報を保存する仕組みがあるか

タイムスタンプの検証可能期間は、TSA証明書の有効期間、失効情報の利用可能性、使用する暗号アルゴリズムの安全性、サービスの運用方針などに左右され、法律で一律に定められた数値ではありません。
日本の認定タイムスタンプサービスでは、最低10年程度の有効期間を設定している例があります。
(出典:アマノセキュアジャパン「アマノタイムスタンプサービス3161」
(出典:GMOグローバルサイン「認定タイムスタンプ byGMO よくあるご質問」

契約書や設計図面など長期保存が必要な文書を扱う場合、保存義務期間がタイムスタンプの検証可能期間より長くなるケースがあるため、選定段階で長期運用の仕組みを確認しておく必要があります。

長期にわたるデータの信頼性維持については、以下の記事でも整理しています。

 

 

 

3.1. ハッシュアルゴリズムの危殆化にどう備えるか?

暗号アルゴリズムは将来的に解読技術が進歩し安全性が低下する可能性があるため(暗号の危殆化)、無期限に安全性が保証される仕組みにはなっていません。

選定時には、現在利用しているハッシュアルゴリズムが将来的に安全性の低いものへと判定された場合に、新しいアルゴリズムへ移行する運用手順や実績があるかどうかを確認することが望まれます。

移行手順が整理されていないサービスでは、アルゴリズム更新のたびに利用者側で個別対応が必要になり、運用負荷が増える可能性があります。

 

3.2. 長期署名・アーカイブタイムスタンプへの対応をどう見極めるか?

長期署名とは、電子署名に署名タイムスタンプを付与し、証明書チェーンや失効情報などの検証情報を保存したうえで、それら全体にアーカイブタイムスタンプを付与することで、電子署名の検証可能期間を長期化する仕組みです。
(出典:JIIMA「電子契約活用ガイドライン」

選定時には、「長期署名機能を標準搭載しているか」「証明書チェーン・失効情報を自動的に保存する仕組みがあるか」「検証可能期間が切れる前にアラート等で知らせてくれるか」の3点を確認すると、長期運用時の属人化を避けやすくなります。

標準機能として対応していないサービスを選んだ場合、検証情報の保存設計を利用者側で個別に構築する必要があり、導入後の運用負荷が大きくなる傾向があります。



4. 失敗しないタイムスタンプの選定基準を比較する

選定時は、以下の基準で複数サービスを比較することをお勧めします。

評価項目

確認するポイント

RFC3161準拠

タイムスタンプトークンがRFC3161形式で発行されるか

総務大臣認定の有無

電子帳簿保存法対応など法令要件を満たす用途に使うか

検証可能期間

文書の保存義務期間より長い検証可能期間を確保できるか

長期署名対応

署名タイムスタンプ・検証情報保存・アーカイブタイムスタンプに対応するか

API・システム連携

既存の文書管理システムやワークフローと連携できるか

費用体系

従量課金か定額か、想定件数に見合っているか

サポート体制

障害時・監査対応時に問い合わせできる窓口があるか

全項目を満たす必要は必ずしもありませんが、自社の利用目的(社内文書の真正性確保のみか、電子帳簿保存法対応まで含むか)に応じて、優先すべき項目は変わります。

利用目的別に確認の優先順位を整理すると、以下のようになります。

利用目的

最優先で確認

次に確認

電子帳簿保存法対応

対象となる保存区分・法令要件

タイムスタンプを利用する場合は総務大臣認定の有無

契約書等の長期保存

長期署名対応

検証可能期間

社内システム連携

RFC3161準拠・API

費用体系

大量発行

費用体系

API・運用負荷

 

5. 導入までの具体的な手順は?

導入は、おおむね以下の手順で進めます。

  • 対象文書の種類と想定発行件数を洗い出す

  • 対象文書の保存義務期間と、必要な検証可能期間を整理する

  • 候補サービスごとに、RFC3161準拠と総務大臣認定の有無を確認する

  • 長期署名機能や証明書チェーン保存の対応状況を確認する

  • 既存の文書管理システム・ワークフローとのAPI連携可否を確認する

  • 小規模にPoC(試験導入)を実施し、発行・検証の結果を確認する

  • 契約・本導入後、有効期限の一覧管理体制を整える

対象文書の洗い出しと保存義務期間の整理を先に行っておくと、その後のサービス比較で必要な検証可能期間の基準が明確になり、選定作業を進めやすくなります。

 

6. タイムスタンプ導入の費用相場はどのくらいか?

費用体系は主に従量課金と定額制の2種類があり、発行件数や運用形態によって適した形態が異なります。

課金形態

特徴

向いているケース

従量課金

発行件数に応じて費用が変動する

発行件数が変動しやすい場合、スモールスタートしたい場合

定額制

月額・年額で一定件数まで利用できる

発行件数が多く、件数が安定している場合

具体的な費用は、対象文書の件数、長期署名機能の有無、API連携の要否によって事業者ごとに幅があるため、候補サービスから個別に見積もりを取得して比較することをお勧めします。

 

 

7. よくある質問

7.1. RFC3161準拠であれば電子帳簿保存法にもそのまま対応できるのか?

RFC3161準拠だけでは、電子帳簿保存法への対応可否は判断できません。

スキャナ保存でタイムスタンプを利用する場合には、認定タイムスタンプであることなど、別途の法令要件を確認する必要があります。

一方、一定の訂正削除履歴が残る、または訂正削除できないシステムに入力期間内に保存したことを確認できる場合には、タイムスタンプの付与要件に代えることも可能とされています。
(出典:国税庁「電子帳簿保存法一問一答【スキャナ保存関係】」

正確な要件は国税庁の最新の一問一答・通達で確認することをお勧めします。

 

7.2. 総務大臣認定とRFC3161準拠は同じ基準なのか?

異なる基準です。

総務大臣認定は、時刻認証業務の運用体制・設備等が認定基準に適合しているかを評価する制度です。
一方、RFC3161準拠は、タイムスタンプトークンの形式や通信手順など、国際的な技術仕様への適合を示します。

国内には、総務大臣認定を受け、RFC3161準拠の形式でタイムスタンプトークンを発行するTSAもあります。

 

7.3. 自社サーバーでRFC3161準拠のタイムスタンプ基盤を構築できるのか?

OSSライブラリ等を用いて、RFC3161に準拠したタイムスタンプの発行・検証機能を技術的に構築すること自体は可能です。

ただし、電子帳簿保存法対応など法的な信頼性が求められる用途では、運用体制や設備の第三者評価を受けていない自社構築の基盤では要件を満たせない場合があります。

そのため、法令対応が絡む用途では、総務大臣認定を受けた外部のTSA・タイムスタンプサービスを利用する方が実務上現実的な選択になりやすいといえます。

 

7.4. タイムスタンプの検証可能期間は何年か?

検証可能期間はサービスによって異なりますが、10年程度の有効期間を設定しているサービスがあります。
正確な期間は契約している事業者の約款・仕様書で確認できます。

 

7.5. 総務大臣認定を受けた時刻認証事業者はどこで確認できるか?

総務大臣認定を受けた時刻認証事業者は、一般財団法人日本データ通信協会のWebサイトに掲載されている認定事業者の一覧で確認できます。

また、認定タイムスタンプを利用している各種サービス・業務については、同協会が運営する別制度である「認定タイムスタンプを利用する事業者に関する登録制度」のページで確認できます。

この2つの制度は対象が異なるため、候補サービスを比較する際は、どちらの制度に基づく情報かを区別して確認することをお勧めします。
(出典:日本データ通信協会「認定タイムスタンプを利用する事業者に関する登録制度」

 

8. まとめ

タイムスタンプの選び方で失敗しないためには、RFC3161準拠という技術仕様の確認だけでなく、総務大臣認定の有無や長期署名・アーカイブタイムスタンプへの対応状況まで含めて選定基準を組み立てることが重要です。

RFC3161準拠は相互運用性やベンダー切替のしやすさに関わる基準であり、総務大臣認定は電子帳簿保存法対応など国内の法令要件に関わる基準であるため、両者は別軸として整理したうえで、自社の利用目的に照らして優先順位を決める必要があります。

長期運用の観点では、ハッシュアルゴリズムの危殆化への備えと、証明書チェーン等の検証情報を保存する仕組みの有無が、数年後の運用負荷を大きく左右します。

導入前に対象文書の保存義務期間と検証可能期間を突き合わせ、比較表に沿って候補サービスを評価することで、後年の切替コストを避けやすくなります。

 

9. タイムスタンプ選びで迷ったら

ここまで解説してきたRFC3161準拠・長期運用の確認は、自社の情報システム担当者だけで判断するのが難しい場合もあります。

iScign」は、総務大臣認定を受けた純国産のタイムスタンプサービスです。
RFC3161準拠のタイムスタンプ発行に加え、長期保存時のタイムスタンプ再付与や運用についても対応可能で、選定段階からの相談も受け付けています。

 

 

弊社、サイエンスパーク株式会社は1994年の創業より、ソフトウェア・ハードウェアのセキュリティ対策を30年以上に渡り続けてまいりました。

セキュリティリスクの診断から対策導入・運用までのお手伝いが可能ですので、お気軽にお問い合わせくださいませ。
ご相談だけでも大歓迎です。

 

参考情報・出典

IETF「RFC 3161 - Internet X.509 Public Key Infrastructure Time-Stamp Protocol (TSP)」

総務省「タイムスタンプについて」

日本データ通信協会「認定タイムスタンプを利用する事業者に関する登録制度」

JIIMA「電子契約活用ガイドライン」

国税庁「電子帳簿保存法一問一答【スキャナ保存関係】」

アマノセキュアジャパン「アマノタイムスタンプサービス3161」

GMOグローバルサイン「認定タイムスタンプ byGMO よくあるご質問」